季節


晴れた日
馬は峠の道で煙草を一服吸ひたいと思ひました。
一針づつ雲を縫ひながら
鶯が鳴いております。
それは自分に来ないで、自分の去つた幸福のやうに
かなしいひびきでありました。
深い緑の山々が静まりかへつて
行手をさへぎつてゐました。
彼はさびしいので一声たかく嘶きました。
枯草のやうに伸びて鬣が燃え
どこからか同じ叫びがきこえました。
今、馬はそば近く、温いものの気配を感じました。
そして遠い年月が一度に散つてしまふのを見ました。


作者
左川爱

报错/编辑
  1. 最近更新:停云
  2. 初次上传:何信步
添加诗作
其他版本
添加译本

PoemWiki 评分

暂无评分
轻点评分 ⇨
  1. 暂无评论    写评论