1
風交(かぜまじ)り 雨降(あめふ)る夜(よ)の 雨交(あめまじ)り 雪降(ゆきふ)る夜(よ)は
すべもなく 寒(さむ)くしあれば 堅塩(かたしほ)を とりつづしろひ
糟湯酒(かすゆざけ) うちすすろひて しはぶかひ 鼻(はな)びしびしに
しかとあらぬ ひげ掻(か)き撫(な)でて 我(あ)れをおきて
人はあらじと 誇(ほこ)ろへど
寒(さむ)くしあれば 麻衾(あさぶすま) 引(ひ)き被(かがふ)り
布肩衣(ぬのかたぎぬ) ありのことごと 着襲(きそ)へども 寒(さむ)き夜(よ)すらを
我(わ)れよりも 貧(まづ)しき人(ひと)の 父母(ちちはは)は 飢(う)ゑ凍(こ)ゆらむ
妻子(めこ)どもは 乞(こ)ふ乞(こ)ふ泣(な)くらむ この時(とき)は いかにしつつか
汝(な)が世(よ)は渡(わた)る
2
天地(あめつち)は 広(ひろ)しといへど 我(あ)がためは 狭(さ)くやなりぬる
日月(ひつき)は 明(あか)しといへど 我(あ)がためは 照(て)りやたまはぬ
人皆(ひとみな)か 我(あ)のみやしかる
わくらばに 人(ひと)とはあるを 人並(ひとなみ)に 我(あ)れも作(つく)るを
綿(わた)もなき 布肩衣(ぬのかたぎぬ)の
海松(みる)のごと わわけさがれる かかふのみ 肩(かた)にうち掛(か)け
伏廬(ふせいほ)の 曲廬(まげいほ)の内(うち)に 直土(ひたつち)に 藁解(わらと)き敷(し)きて
父母(ちちはは)は 枕(まくら)の方(かた)に 妻子(めこ)どもは 足(あと)の方(かた)に
囲(かく)み居(い)て 憂(うれ)へさまよひ かまどには
火気吹(ほけふ)き立(た)てず 甑(こしき)には 蜘蛛(くも)の巣(す)かきて
飯炊(いひかし)く ことも忘(わす)れて ぬえ鳥(どり)の のどよひ居(を)るに
いとのきて 短(みじか)き物(もの)を 端切(はしき)ると いへるがごとく しもと取(と)る
里長(さとをさ)が声(こえ)は 寝屋処(ねやど)まで 来立(きた)ち呼(よ)ばひぬ かくばかり
すべなきものか 世間(よのなか)の道(みち)
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