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風交(かぜまじ)り 雨降(あめふ)る夜(よ)の 雨交(あめまじ)り 雪降(ゆきふ)る夜(よ)は
朔风乱夜雨,夜雨杂雪飞,
すべもなく 寒(さむ)くしあれば 堅塩(かたしほ)を とりつづしろひ
何以御此寒,嘬口糟醅酒,
糟湯酒(かすゆざけ) うちすすろひて しはぶかひ 鼻(はな)びしびしに
气冷冲喉咳,涕出鼻嘘唏,
しかとあらぬ ひげ掻(か)き撫(な)でて 我(あ)れをおきて
疏髯拈自许,舍我更复谁,
人はあらじと 誇(ほこ)ろへど
意则虽亦强,凌寒终莫排,
寒(さむ)くしあれば 麻衾(あさぶすま) 引(ひ)き被(かがふ)り
引我麻布被,着我[辆档]衣,
布肩衣(ぬのかたぎぬ) ありのことごと 着襲(きそ)へども 寒(さむ)き夜(よ)すらを
尽袭吾所有,夜犹逞斯威,
我(わ)れよりも 貧(まづ)しき人(ひと)の 父母(ちちはは)は 飢(う)ゑ凍(こ)ゆらむ
视我更贫者,若何其苦凄,
妻子(めこ)どもは 乞(こ)ふ乞(こ)ふ泣(な)くらむ この時(とき)は いかにしつつか
父母忍肤冻,妻子相啼饥,
汝(な)が世(よ)は渡(わた)る
其如此时何,尔生何以维。
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天地(あめつち)は 広(ひろ)しといへど 我(あ)がためは 狭(さ)くやなりぬる
天地虽云广,胡独为我小,
日月(ひつき)は 明(あか)しといへど 我(あ)がためは 照(て)りやたまはぬ
日月虽云明,胡独不我照,
人皆(ひとみな)か 我(あ)のみやしかる
岂其人皆然,抑我独不平,
わくらばに 人(ひと)とはあるを 人並(ひとなみ)に 我(あ)れも作(つく)るを
适亦生为人,视人初无少,
綿(わた)もなき 布肩衣(ぬのかたぎぬ)の
辆档乃无绵,乱垂如海藻,
海松(みる)のごと わわけさがれる かかふのみ 肩(かた)にうち掛(か)け
褴褛自肩悬,曲伏庐中老,
伏廬(ふせいほ)の 曲廬(まげいほ)の内(うち)に 直土(ひたつち)に 藁解(わらと)き敷(し)きて
即茨土泥上,草草席禾藁,
父母(ちちはは)は 枕(まくら)の方(かた)に 妻子(めこ)どもは 足(あと)の方(かた)に
枕边坐父母,妻孥傍足绕,
囲(かく)み居(い)て 憂(うれ)へさまよひ かまどには
围居莫知措,相对但苦恼,
火気吹(ほけふ)き立(た)てず 甑(こしき)には 蜘蛛(くも)の巣(す)かきて
灶绝烟火气,甑为蛛丝罩,
飯炊(いひかし)く ことも忘(わす)れて ぬえ鳥(どり)の のどよひ居(を)るに
久疏忘炊术,中鸣如夜鸟,
いとのきて 短(みじか)き物(もの)を 端切(はしき)ると いへるがごとく しもと取(と)る
已短犹欲剪,谚悯无可告,
里長(さとをさ)が声(こえ)は 寝屋処(ねやど)まで 来立(きた)ち呼(よ)ばひぬ かくばかり
执笞里长来,逼叱声咆哮,
すべなきものか 世間(よのなか)の道(みち)
曾是不相恤,胡然世人道。