床板の一枚を剥がすと
一冊の日記帳が隠されているはずだ
人目に触れるのを拒みながら
触れることを期待した文字の群れが
ひっそりと紙の上で褪せていく
その明示はもうほとんど意味を失っているが
その含意は辛うじて生きる歓びの余韻を残している
「八月六日 晴
《神》は人の言葉で語らない、
それは空の言葉、風の言葉、烏の言葉、
岩石の言葉、ムカデの言葉、毒茸の言葉で語る。
人の言葉を忘れ去らなければ聞こえない言葉、
人の最初のあやまちはそれを《神》と名づけたことだ。」
床板を割って獰猛な植物が室内を侵している
傾いた戸棚に向かって蟻が長い列を作っている
かつて神と呼ばれた何ものかは
語り続けることをやめない
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