土気色の水がためらいがちに流れていて
それが河なのだった
地下に棲む形をもたぬものの末裔
水が海へ向かっているのは知っているが
いつどこから湧いてきたのかは知らない
電車が河を渡ると隣の若い女が欠伸した
その口の小暗い奥からも湧いてくるものがあって
突然私は自分のアタマがカラダより愚かなことに気づく
電車に揺られているカラダの私が
ほとんど水でできていることを怖れて
アタマの私はコトバで自分を支えている
いつか遠い昔 どこか遠い所
コトバの量はいまよりずっと少なかったが
冥界とつながるその力は多分ずっと強かった
水は海に雲に雨に氷に姿を変えながらも
この星にとどまる
コトバも演説に詩に契約書に条約に姿を変えて
この星にへばりついている
この私もまた
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