「音の河」

——武満徹に

音の河は樹木と樹木のあいだに流れている
積乱雲と玉蜀黍畑のあいだにも
たぶん男と女のあいだにも

きみはその伏流をぼくらの内耳に響かせる
ピアノでフルートでギターで声で
ときに沈黙で

音楽はいつまでたっても思い出にならない
この今を未来へと谺させるから
きみもいつまでもいなくならない

きみがこっちに置いていった服を着て
ぼくはそっちにいるきみの歌を聴く
ホールを囲む木立にゆっくり夕闇が下りてきて

言葉の秩序は少しずつ背景に退いてゆき
世界の矛盾に満ちた暖かい吐息を
ぼくらは耳元に感じる


作者
谷川俊太郎

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