言葉だけになってしまって
山はぼうっとうずくまってる
港は薄曇った空の下
何事か思案している
他処の国でもそうなのだろうか
海は淡々と陸と陸を隔て
罪人たちの深い嘆きの感嘆詞さえ
言葉だけになってしまって
転んでもただで起きない商人は
電子まみれでバスタブにいる
大昔に書いた恋文も
言葉だけになってしまった
緊縛された若い女の首筋に
青い静脈が浮いている
言葉だけになってしまって
詩は世界から剥落しかけて……
嘘だ!嘘だ!
何が言葉だけなものか!
太腿を脇差で刺して
小姓は居眠りすまいとしたではないか!
―静けさだ
あとは静けさあるのみだ
案山子たちは尾羽打ち枯らし
藁の頭で瞑想し
どっかの家の食卓の
夫婦茶碗によそわれて
ご飯が湯気を立てている
ほのかに湯気を立てている
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