「詩人の墓」へのエピタフ


無限の沈黙である私は
お前に言葉を與へてやらう。
——「神が人間を考へる」ジュール・シュペルヴィエル 中村真一郎 訳
生まれたとき
ぼくに名前はなかった
水の一分子のように
だがすぐに母音が口移しされ
子音が耳をくすぐり
ぼくは呼ばれ
世界から引き離された

大気を震わせ
粘土板に刻まれ
竹に彫りつけられ
砂に記され
言葉は玉葱の皮
むいてもむいても
世界は見つからない

言葉をなくして
そよぐ木々になりたかった
十万年前の雲になりたかった
鯨の歌になりたかった
今ぼくは無名に帰る
目と耳と口を泥にふさがれ
指をもう星に預けて


作者
谷川俊太郎

报错/编辑
  1. 初次上传:王负剑
添加诗作
其他版本
添加译本

PoemWiki 评分

暂无评分
轻点评分 ⇨
  1. 暂无评论    写评论