無限の沈黙である私は
お前に言葉を與へてやらう。
——「神が人間を考へる」ジュール・シュペルヴィエル 中村真一郎 訳
生まれたとき
ぼくに名前はなかった
水の一分子のように
だがすぐに母音が口移しされ
子音が耳をくすぐり
ぼくは呼ばれ
世界から引き離された
大気を震わせ
粘土板に刻まれ
竹に彫りつけられ
砂に記され
言葉は玉葱の皮
むいてもむいても
世界は見つからない
言葉をなくして
そよぐ木々になりたかった
十万年前の雲になりたかった
鯨の歌になりたかった
今ぼくは無名に帰る
目と耳と口を泥にふさがれ
指をもう星に預けて
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