千鳥と遊ぶ智恵子高村光太郎

千只鸟与游戏的智惠子佚名 译


人つ子ひとり居ない九十九里の砂浜の
一个孩子也没有的九十九里沙滩
砂にすわつて智恵子は遊ぶ。
智惠子坐在砂上玩游戏
無数の友だちが智恵子の名をよぶ。
无数朋友呼唤着智惠子的名字
ちい、ちい、ちい、ちい、ちい――
智、智、智、智、智——
砂に小さな趾(あし)あとをつけて
砂上印着小小的脚印
千鳥が智恵子に寄つて来る。
千只鸟向智惠子飞来了
口の中でいつでも何か言つてる智恵子が
永远不停地说着什么的智惠子
両手をあげてよびかへす。
举起双手召唤鸟儿
ちい、ちい、ちい――
千、千、千——
両手の貝を千鳥がねだる。
智惠子硬讨来两手贝壳
智恵子はそれをぱらぱら投げる。
哗啦啦地扔出去
群れ立つ千鳥が智恵子をよぶ。
飞起来的千只鸟呼唤着智惠子的名字
ちい、ちい、ちい、ちい、ちい――
智、智、智、智、智——
人間商売さらりとやめて、
世间生计抛诸脑后
もう天然の向うへ行つてしまつた智恵子の
蓦然看见了
うしろ姿がぽつんと見える。
走向天性彼岸智惠子的背影
二丁も離れた防風林の夕日の中で
两条街开外防风林的落日中
松の花粉をあびながら私はいつまでも立ち尽す。
沐浴着松树花粉的我久久伫立


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